ミステリーサークル ― 人類史に残る謎の現象の解明に迫る
科学やIT技術が発展し、現代では「目に見えない存在による仕業だ」と言われてきた多くの物事が解明されてきました。しかし、未だに世の中には科学では解明できない心霊、スピリチュアル現象もたくさんあります。そのひとつが「ミステリーサークル」です。
「昔はよく聞いていたのに、最近は聞かなくなったなぁ」と思う方もいるでしょう。かつてはTVのバラエティ番組でもよく取り上げられていたのに、なぜ最近は見なくなってしまったのか、そもそも誰が作ったものなのか、今回は、最近忘れられがちな「ミステリーサークル」の謎についてクローズアップしていきます。
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ミステリーサークルとは
「ミステリーサークル」は、畑で栽培している農作物が押し倒された跡が模様になっていることをいい、英語では正式に「クロップ・サークル」といいます。これを日本ではミステリーサークルと呼んでいます(まれに「フェアリーサークル」とも呼ばれます)。模様はさまざまで、円が複数組み合わさっているものから、長方形や三角形を組み合わせたもの、人や宇宙人の姿が写っているものまで、いろいろなパターンがあります。
1970年代のイギリスの田園地帯で流行り、1980〜1990年にピークを迎えてその後世間のミステリーサークル熱は終息していきました。芝や緑地は自然現象で円形になることもあるのですが、あまりに手が込んだ知的さを感じさせる模様なので、自然なものではないと当時は注目されていました。
誰が作ったのか
超能力や幽霊のように本当に存在しているのか目に見えなくてわかりづらい他の現象とは違って、目に見える謎の現象であるため、大ブームになりました。目の前の畑に模様があったら誰でも存在を否定することはできませんよね。当時、突如として現れるこのミステリーサークルを説明するために、専門家や雑誌・TVによって仮説が複数立てられました。自然現象だという説と、手の込んだ模様だから人類以外の存在だというオカルト的な説など以下のようにさまざま憶測されました。
・突風説(自然現象)
その地域にだけ吹く特殊な風によってできた。
・ハリネズミ説(自然現象)
その地域に住むハリネズミたちの激しい性行為によってたまたま模様ができた。
・プラズマ説(自然現象)
固体・液体・気体ではない第四の形態をプラズマといい、プラス電荷とマイナス電荷がバランスよくある場所に熱が加わるとマイナス電荷が軌道からそれてバランスが崩れ、不安定な状態になり、プラズマ原子の状態になる。雷や火やオーロラなどはプラズマになると、テレンス・ミーデン氏(科学者)が唱えた。
・マイクロバースト説(自然現象)
気流によるものという説。積雲や積乱雲から爆発的に吹きおろす気流が、地表に衝突するときに吹き出す破壊的な気流をダウンバーストという。ダウンバーストは広がりの大きさによってマクロバースト(4km以上)とマイクロバースト(4km以内)にわかれる。このマイクロバーストは草木を薙ぎ倒すほどの威力があるため、気流によってミステリーサークルを作った。
・竜巻説(自然現象)
小さな竜巻が発生し、円形に模様を残した。
・シロアリ説(自然現象)
シロアリが生存本能からその地域の植物を食べて土壌を剥き出しにすることで水分を確保していた。ミステリーサークルのある場所には必ずシロアリが発見されたことから着眼された説。
・宇宙人説(オカルト)
宇宙人がやってきて、メッセージを送るために作った。メッセージを読み解くために円周率や二進法などを使って解読法も数々編み出された。
・タイムトラベル説(オカルト)
未来人が地球を通り抜けるために作った。これはホレス・ドルー氏(分子生物学者)が唱えた説で、模様には未来人からのメッセージが描かれているという。
・幽霊(オカルト)
その地域の幽霊によって発生したもの。
・魔術(オカルト)
ミステリーサークルを使って魔術を行ったもの。
このように、謎の現象を説明するためにさまざまな説が唱えられ、専門家が調査し始めたり、宇宙人説からNASAも動いて逆に宇宙人へメッセージを発信する、という実験もされました。
暴かれた真実
ここまで盛り上がりを見せたミステリーサークルですが、イギリスの高齢男性2人による創作によるものだったことが後々に発覚します。
1991年、ダグ・バウワー氏とディブ・チョーリー氏という2人の老人がミステリーサークルの最初の制作者として名乗りでました。ベニヤ板などの身近な道具と人力で、比較的短時間で作れることを彼らは実演・実証しました。ときに、複数のグループで作っていたこともあったそうです。「とても人が作ったとは思えない」と言われていた複雑な模様は、CADという設計ツールを使って、本格的な設計を事前にしていて非常に計画的でした。また、「作物が編み込まれて薙ぎ倒されているため、人の成す技ではない」と言われていましたが、これも2人によって人為的にできることが証明されました。
実際に、初期に作成されたミステリーサークルには、2人の名前の文字「D」が入るように作成されており、1966年にタリーでUFOの目撃情報が出たことに刺激されて、1978年頃からミステリーサークルにUFOが着陸したかのように形状を作成していたり、宇宙人説が浮上したときにはグレイ系の宇宙人の絵を描いたり、竜巻説が浮上したときは、右巻きの円の外に左巻きの円をもつサークルを作成して、竜巻ではできないように見せたりと作為的に設計していました。また、ミステリーサークルの近くに光の玉がたくさん見つかっていましたが、これは別グループの人たちが懐中電灯に風船をくくりつけて飛ばしていただけでした。
ダグ・バウワー氏とディブ・チョーリー氏は、最初は年に1〜2つ作っていましたが、1982年ごろから作成数を増やし、最終的に250以上作成してきたそうです。
ダグ・バウワー氏の妻は、夫が夜遅くに度々出かけるため、しつこく問い詰めたところ、ミステリーサークルを作っていたことを旦那が自白しました。すると、妻も作品作りに混じって三人でサークルを作っては喜んでいました。初期の作品は土曜日の朝に発見されており、ダグ・バウワー氏が金曜の夜に外出を許可されていたからといわれています。妻に知られてからは、ダグ・バウワー氏はいつでも外出許可が出るようになり、不定期にミステリーサークルが発見されるようになりました。
宇宙人や超常現象と結びつけて考える人が増えたため、国や公共機関で議論が始まったことから、自分たちのいたずらで税金が無駄に使われるのは忍びないという理由で1991年に2人の男性の自作であったことが公表されました。老人が地道にやっていたため、そこまで批判はされませんでしたが、作物を荒らした点で損害賠償は請求されました。しかし、製作した功績を認められ、2人はイグノーベル賞の物理学賞(1992年)を受賞しています。ただ、人為的な作品であることが発覚してからもミステリーサークルを作り続ける別のグループや、観光・商用目的で商売として作成されるケースが増え、ヨーロッパでは農家の畑を荒らされたという訴えがあったことから、現在では警察の取り締まりの項目の一つに追加されるようになりました。日本でも1990年に高校生グループがミステリーサークルを自作する事件が発生しました。
未だに解明されていない謎
老人たちが告白したことで一気にしらけて世間の熱は冷めたものの、未だに謎が判明していないことがあると主張する人もいます。たとえばミステリーサークルができた周辺には、放射反応や磁気の狂いが必ず確認されていることです。また、老人たちの話ではベニヤ板でつくられたはずなのに、明らかに強い熱を加えて押し倒されていることがわかっています。穀物に小さな穴が空いていて、熱が加わって中身が出たことによる現象だと分析されています。さらには、ミステリーサークルの近くにある植物の細胞が変化して活性化していることも発見されており、一概に人の仕業とはいえない物事も実は起きています。
まとめ
かつてはナスカの地上絵やモヤイ像と並んで、世界の不思議現象とされていたミステリーサークルでしたが、人為的に作られたものとわかってスッキリした人は多いのではないでしょうか。ミステリーサークルが人工のものとわかっていても好きな方は、独創的なミステリーサークルを作るコンテストが海外で行われていたり、ミステリーサークルをテーマにした映画もいくつか公開されているので、見てみるといいかもしれませんね。